一人暮らしの食生活は栄養バランスが悪くなりやすいのが悩みの種。「いつも便秘がち」、「なんだか疲れやすい」など、不調を感じている人は要注意です。
そこで今回は、一人暮らしの食事で不足しやすい栄養素や、栄養不足を解消するための方法、手軽に摂れて栄養価が高いおすすめの食材などについてご紹介します!
一人暮らしの食生活によくある問題点
一口に一人暮らしと言っても、その年代は若い世代からシニア世代まで様々。日本では年々、単身世帯の割合が増え続けており、それだけ食生活の問題も多岐にわたるものになっています。
例えば、シニア世代の単身者には健康を意識した食事を摂る人が多い一方、若い世代は「安さ」や「手軽さ」を重視する人が多い傾向にあります。年をかさねるにつれて健康に不安を感じるのは当然のことで、それがシニア世代の食に対する意識の高さを表しているのだと言えます。
しかし、食生活が体に及ぼす影響は、長く積み重ねるほど大きなものになります。病気を未然に防ぐという意味でも、若い頃から栄養バランスの良い食事を心がけることは非常に重要です。
ここでは、どの世代の単身世帯にも当てはまることの多い食生活の問題点を具体的に挙げていきましょう。
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食事のメニューが偏りがち
一人暮らしの場合は、食事の内容や食べるタイミングなどをすべて自分で決められるので、栄養バランスが偏りやすくなります。
特に仕事や学業などで忙しい若い世代では、毎日コンビニのお弁当を食べている、菓子パン1個で済ませてしまう、脂っこい物ばかり食べているなど、栄養不足やカロリー・塩分の過剰摂取が心配されます。
一方、シニア世代でも噛む力の低下などから、食べる量が徐々に減っていくケースが見られます。やわらかい物だけを選んで食べていると、若い世代と同様に栄養バランスが偏ってしまうことになります。
朝食を食べないことが多い
「朝はゆっくり朝食を摂る時間がない」という人や、「食欲が湧かないので朝食は食べない」という人はきっと多いですよね。事実、一人暮らしの若い世代で朝食を摂らない人は、かなりの数に上ることが分かっています。
しかし、朝食は脳のエネルギー不足を解消するために必要な食事です。脳はブドウ糖をエネルギー源としていますが、夕食から摂取したブドウ糖は寝ている間に消費され、起床時にはすでにエネルギー不足の状態になっています。
朝起きた時にボーっとするのはその証拠。そのため、朝食でご飯やパンなどの主食からブドウ糖を摂らないと、集中力が欠けて仕事や勉強がはかどらなくなってしまうのです。
体重の増加につながる
食生活が偏っている人の中には、生活全般が不規則になっている人も多く、それが肥満の原因になることがあります。例えば、夜更かしや朝食抜きの生活などがまさにそうです。
睡眠時間が短くなると、食欲を増加させるホルモンが増え、逆に食欲を抑えるホルモンが減少すると言われています。また、朝食を抜くと空腹でいる時間が長くなり、昼食や夕食で一気にカロリーを摂った時に血糖値が急激に上昇し、糖を脂肪に変える働きが過剰になってしまうのです。
そのため、短時間睡眠や朝食抜きの生活を送っている人は、規則正しい生活を送っている人よりも肥満になりやすいと言えます。特に男性はここ数年で肥満傾向の人が増加していることが指摘されており、注意が必要です。
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健康面でのリスクが高まる
一人分の食事はいろいろな食材を用意しづらく、忙しい時は自炊自体が面倒になりがちです。また、食事を摂る時間が不規則になったり、同じメニューばかり続いても、誰も文句を言いません。しかし、この自由度の高さが偏った食生活を招いてしまいます。
一方、ファミリー世帯の場合は、食事を作る人が家族の健康に配慮するケースが多いため、単身世帯よりも食生活のバランスがとれている傾向にあります。世帯別で食生活に大きな違いが生まれるのは、このような背景があるからなのです。
栄養不足やカロリー・塩分の過剰摂取は、健康面でのリスクを高めます。つまり、食生活が乱れがちな一人暮らしの人の方が、生活習慣病などを発症しやすいと言えるのです。
孤食が食生活や精神面に影響する
一人で食事をすることは「孤食」と呼ばれており、誰かと食事を共にする「共食」よりも精神面において不安定になりやすいことが懸念されています。
農林水産省の調査によると、ほぼ毎日孤食をしている人は全体の約10%、週の半分以上孤食という人は約15%を占めています。また、年代別や性別では70代の女性や20代の男性が多く、単身世帯の割合が多い世代にそのまま当てはまります。
孤食と共食を比較すると、共食の方が主食・主菜・副菜が揃った食事を摂る頻度が高く、バランスの良い食生活を送っていることが分かります。また、ストレスやイライラなどを感じることが少なく、精神面で安定しているという結果も出ています。
バランスの良い食事を誰かと一緒に食べることが、心と体の両方に良い影響を与えているわけです。
一人暮らしの食事で不足しがちな栄養素
食材に含まれる様々な栄養素の中でも、体の機能を維持するために特に必要な5つの栄養素を「五大栄養素」と言います。
五大栄養素とは、タンパク質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラルのこと。このうちの糖質や脂質は食生活が偏ると摂り過ぎになることもありますが、残りの3つは一人暮らしの食事では不足しやすい栄養素です。それらについて、詳しく見ていきましょう。
タンパク質
タンパク質は筋肉・血液・内臓など、体のすべてを作るために必要な栄養素です。肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれているため、主菜をしっかり食べていないとタンパク質が不足します。
ダイエット中も筋肉の量が減ると代謝が落ちてしまうため、タンパク質をしっかり摂って筋肉量を維持することが大切です。
タンパク質は20種類のアミノ酸で構成されており、そのうちの9種類は「必須アミノ酸」と呼ばれています。必須アミノ酸は体内で生成できないため、食事から摂取する必要があります。
ビタミン
ビタミンは体の様々な機能を維持する潤滑剤のような役割を持っています。
その数は全部で13種類あり、食材によって多く含まれているビタミンの種類もそれぞれ異なります。また、水に溶けやすい「水溶性」と油になじみやすい「脂溶性」の2種類に分かれます。
肉・魚・野菜・卵・乳製品など、幅広い種類の食材に含まれているため、いろいろなおかずをバランス良く食べることが大切です。
ビタミンの種類 | |
水溶性ビタミン | ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンK |
脂溶性ビタミン | ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンC・葉酸・ナイアシン・ビオチン・パントテン酸 |
ミネラル
ミネラルもビタミンと同様に体の機能をサポートする栄養素です。
体に必要なミネラルは必須ミネラルと呼ばれ、全部で16種類あります。また、1日の摂取目安量が多い物を「多量ミネラル」、少ない物を「微量ミネラル」と言います。
ミネラルも様々な食品に含まれているため、肉・魚・野菜・海藻類などをバランス良く食べる必要があります。
ミネラルの種類 | |
多量ミネラル | カルシウム・リン・カリウム・硫黄・塩素・ナトリウム・マグネシウム |
微量ミネラル | 鉄・亜鉛・銅・マンガン・クロム・ヨウ素・セレン・モリブデン・コバルト |
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栄養不足になるとどんな不調が表れる?
食事から摂る栄養素は体の様々な場所に働きかけるため、栄養が不足すると体調にもいろいろな影響を及ぼします。
ここでは、五大栄養素が不足すると起こりやすい不調についてご説明しましょう。
栄養素 | 不足すると表れる症状 |
タンパク質 | 疲れ・肌荒れや髪のパサつき・イライラ |
糖質(炭水化物) | 疲れ・思考力の低下 |
脂質 | 肌荒れや髪のパサつき・疲れ・イライラ |
ビタミン | 疲れ・食欲の低下・貧血・口内炎・便秘 |
ミネラル | 骨が弱くなる・血圧の上昇・食欲の低下 |
栄養不足によるこのような不調をそのままにしていると、深刻な病気になる恐れもあります。
一人暮らしの栄養不足を解消する方法
一人暮らしで簡単な自炊しかしないという人や、外食やお弁当などで済ませることが多いという人でも、食生活にちょっとした習慣を取り入れれば、簡単に栄養バランスを良くすることができます。
栄養に関する詳しい知識や料理のテクニックは不要です。まずは、以下のような方法を普段の食事の中で実践してみましょう。
カット野菜を使う
たくさんの野菜を買ったり、調理したりするのが大変な時は、スーパーやコンビニで手に入る「カット野菜」を活用しましょう。
カット野菜にはキャベツの千切りなどのシンプルな物から、サラダ用や炒め物用に数種類の野菜が入っている物、煮物や汁物用に下茹でしてある物など、いろいろな種類があります。
サラダ用ならドレッシングをかけるだけなので簡単。おかず用も下ごしらえが不要なので、野菜不足を手軽に補えます。
冷凍野菜をストックしておく
カット野菜は1~2回で食べ切る量にぴったりですが、まとめ買いして少量ずつ使いたい場合には「冷凍野菜」がおすすめです。
冷凍野菜には加熱して食べる野菜が多く、ブロッコリー・ほうれん草・コーン・枝豆・里芋などが人気です。また、複数の野菜をミックスした商品もあるので、野菜を個別に買って下ごしらえする手間を省けます。
市販の冷凍野菜は家庭ではできない急速冷凍で鮮度や風味が保られており、栄養価も損なわれていないのが魅力です。
一方、きのこ類や葉物野菜などは家庭でも冷凍しやすいため、使い切れない時は小分けにして冷凍保存しておくとよいでしょう。
乾燥野菜は汁物や煮物に◎
野菜の加工食品の中には、常温保存が可能で日持ちする「乾燥野菜」もあります。
乾燥野菜とはフリーズドライ製法などで野菜から水分を除いた物で、汁物や煮物ならそのまま入れるだけ、炒め物などの場合もお湯で戻すだけで使える手軽な食品です。自炊する時はもちろん、インスタントの味噌汁・スープ・ラーメンなどにも簡単に野菜をプラスできます。
野菜を乾燥させると、食物繊維・鉄分・カルシウム・ビタミンB群などの栄養素が凝縮されます。一方、ビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素は減ってしまうため、生野菜と乾燥野菜を上手に使い分けて食べるのがおすすめです。
時間がある時に作り置きをする
「自炊したいけれど、忙しい日は結局コンビニやデリバリーなどで済ませてしまう」。そんな理由で食生活が乱れているなら、休日などを利用して作り置きにチャレンジしてみましょう。
作るおかずはごく簡単な物でOK。手間がかかると面倒になってしまうので、まずは楽に続けられるくらいの簡単なおかず作りから始めるのが理想です。
おかずを冷凍保存する際は、必要な分だけをすぐに温めて食べられるように一食分ずつに分けて冷凍しておきましょう。
お弁当に使う場合は、おかずカップに分けて冷凍しておくと便利です。解凍してすぐにお弁当に詰められるので、朝のお弁当作りが楽になりますよ。
野菜ジュースやスムージーを飲む
野菜不足を手軽に補うために、市販の野菜ジュースやスムージーを飲むというのも一つの方法です。
ただし、食物繊維やビタミンCなどは加工の段階で栄養が失われてしまいます。そのため、ジュースやスムージーだけで1日分の野菜を摂取するのは難しいと言えるでしょう。
しかし、β-カロテンやリコピンなどは、生の野菜よりもジュースの方が吸収率が高くなります。栄養素の特性によって含有量も異なるため、野菜ジュースやスムージーは食事の補助的な役割として飲むのがおすすめです。
とはいえ、たくさんの量を飲めば体に良いというわけではありません。野菜や果物に含まれる糖質は過剰に摂取すると脂肪として蓄えられてしまうため、飲み過ぎには注意しましょう。
ドライフルーツを手軽なおやつ代わりに
小腹が空いた時につい砂糖たっぷりのお菓子やスナック菓子を食べてしまうという人は、おやつをドライフルーツに置き換えてみましょう。
ドライフルーツは水分を取り除いている分、生のフルーツよりも栄養が凝縮しています。また、乾燥していて噛み応えがあるので、お腹もしっかり満足できます。
ただし、フルーツによっては風味を良くするために砂糖を使用している物もあります。また、砂糖不使用の物も素材自体に糖分が多いことがあるので、おやつに食べる際は適度な量を心がけましょう。
ナッツ類や落花生もおすすめ
おやつやおつまみにはナッツ類や落花生もおすすめです。
ナッツは主に木の実を指す名称で、アーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツ・ピスタチオなどがあります。また、落花生は木の実ではありませんが、ナッツ類に分類されることが多く、これらの食品には「不飽和脂肪酸」という体にとって良い脂質が多く含まれています。
不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らす働きがあり、生活習慣病の予防に役立ちます。ただし、ナッツや落花生は塩分で味付けされた物が多く、カロリーも高めなので食べ過ぎにはご注意ください。
サプリメントで補うという方法も
どうしてもバランスの良い食事を摂るのが難しかったり、苦手な食材が多かったりするような場合は、サプリメントで栄養を補うという方法もあります。
サプリメントにはたくさんの種類があるため、まずは自分に不足している栄養素をしっかり見極めましょう。
野菜不足にはビタミンやミネラル、タンパク質不足にはプロテインがおすすめです。また、多くの人に不足しているカルシウムや鉄分も、サプリメントなら効率よく摂取できます。
宅食サービスを利用する
自炊をするのが大変でコンビニ弁当やデリバリーに頼ってしまうという人には、宅食サービスがおすすめです。
宅食サービスのメニューは管理栄養士が監修しており、1食分の栄養バランスが完璧です。また、冷凍タイプのお弁当が多いため、ストックしておけばレンジで温めるだけで簡単に食事の用意ができます。
そして、メニューを自由に選べたり、購入方法をライフスタイルに合わせられるところも魅力です。
好き嫌いが多い人や、好きなおかずだけ食べたいという人は、1点ずつメニューを選べる宅食サービスが良いでしょう。一方、注文の手間を省きたい人には、おまかせのメニューで定期購入できるコースがぴったりです。
ここではたくさんある宅配弁当サービスの特色・料理のジャンルなどを始め、1食あたりの価格・配送料などなど、実際に利用するにあたって気になる点を徹底リサーチしてご紹介しています。 ヘルシーな食生活を送りたい、ダイエット中の食事として宅配弁[…]
栄養価が高く手軽に摂れる食材
食生活の偏りを感じる時は、栄養価が高い食材を意識して献立にプラスしてみましょう。
特に以下のような食材は手軽に摂れるので、一人暮らしの方にもおすすめです。
おすすめの食材 | 主な栄養素 |
納豆 | タンパク質・食物繊維・ビタミンK・ビタミンB群 |
ブロッコリー | カリウム・食物繊維・ビタミンC・鉄分・葉酸 |
トマト | β-カロテン・ビタミンC・ビタミンE・カリウム |
青魚の缶詰(さば・イワシ・サンマなど) | 脂質(DHA・EPA)・タンパク質・カルシウム |
ヨーグルト | 乳酸菌・タンパク質・カルシウム |
卵 | タンパク質・ビタミン類・カルシウム・鉄 |
海藻類(海苔・わかめ・ひじき・昆布など) | 食物繊維・ミネラル・ビタミン類 |
きのこ類(しいたけ・しめじ・えのき・舞茸など) | 食物繊維・ビタミン類・ミネラル |
一人暮らしの食生活は栄養不足にご注意を
一人暮らしの食事は献立や食べる時間を自由に決められるため、ちょっとしたことで栄養バランスが偏りがちです。
特に注意したいのは「栄養不足」。しっかりお腹を満たしているつもりでも、実は炭水化物ばかりでタンパク質・ビタミン・ミネラルなどが不足していることも珍しくありません。
今回は、一人暮らしの食生活で不足しやすい栄養素や、すぐに実践できる対策法についてご紹介しました。最後にそのポイントをおさらいしてみましょう。
- 一人暮らしの食事はメニューが偏りがち
- 朝食抜きや孤食は健康面にもリスクあり
- 不足しやすい栄養素は「タンパク質・ビタミン・ミネラル」
- 栄養不足は疲れ・イライラ・肌荒れなどの原因に
- 自炊にはカット野菜や冷凍野菜が便利
- おやつにはドライフルーツやナッツ類が◎
- 宅食サービスは手軽で栄養満点
食生活の偏りや栄養不足は簡単な方法で改善できます。病気のリスクを高めないためにも、ぜひ食生活のルールを見直して、栄養不足を解消しましょう!